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Teoreamachineの小説ブログ

チェ・ゲバラ国連演説全訳 その2

 

ここで支持を得た方策が、効果を発揮し、もはや言うまでもないようなことになったとしても、アメリカ合衆国が我々の領域内で攻撃態勢にある基地を維持する限りは、どのような地域協定も維持することはできないと指摘しておかなればならない。その領域とは、核兵器とそれ以外の武器を制限なしに常備する権利を持っているという感覚の、プエルトリコ、パナマ、その他ラテンアメリカの国々だ。米州機構での最近の決議によりキューバが除名されたということを考えれば、リオ協定の行使による攻撃を受けるということも想定できるため、我々は自らの防衛のための軍備を整えられるようにしなければならないとも感じている。先に言及した会議が、それは不運にも困難なものではあるがこういった目的を達成するためのものならば、それは人類の歴史上最も重要なものの一つになるだろう。このことを明確にするために、中華民国ではなく中華人民共和国に代表権を持ってもらう必要があり、それこそがこういった会議を開催しなければならない理由なのだ。非常に簡単なことではあるが、世界中の国々の人々は、その国民を単独に代表する中華人民共和国の存在を無視できないということを悟ることだろうし、そしてアメリカ合衆国の支援の下で台湾を支配する党派に現在は奪われている一つの相応な議席を与えることだろう。

 

 

国連における中国の代表権の問題は、どう考えても組織への新規加盟といったことと同様でなく、中華人民共和国の国民の正当な権利の回復ということなのだ。

 

 

我々は2つの中国という筋書きが誤っていると力説しなければならない。蒋介石一派の台湾が国連に残るということはあってはならないのだ。繰り返して言うが、我々が問題にしているのは、中国の代表を僭称する者を追放し、中国国民の正当な代表を据えるということだ。

 

 

国連において、3分の2の多数派の代表とその票を求め、中国の正当な代表権に「重大な問題」があるとして無理のある問題提起をしているアメリカ合衆国政府に対しても警告しておきたい。中華人民共和国が国連に加盟するというのは、確かに世界全体にとって重大な問題である。しかしそれは国連の機構にとっての問題ということではなくて、それが単なる手続きの問題という性質のものに違いないという点においてそれは問題なのだ。こういうやり方でこそ正義は行使されうる。そして正義の実現とほぼ同じくらいに重要なのは、この威厳ある総会がものを見聞きし、話すための自らの眼と耳と舌を機能させており、決断を下すためにしっかりした基準を持っているということをきっぱりと示すということだ。NATO加盟国内での核兵器の拡散、とりわけドイツ連邦共和国による大量破壊兵器の保有は、武装解除への賛同の可能性をずいぶん遠ざけてしまうものであり、そういった同意がドイツの平和的統一の問題になってしまうということに関連している。その明確な理解なしには、民主共和国と連邦共和国という2つのドイツの存在が認知されることはない。ドイツの問題を解決する唯一の方法は、全権をもってドイツ民主共和国の交渉に直接的な参加をすることだろう。そしてあとは、この総会の議題に広く取り上げられている経済発展と国際貿易の問題にだけ触れておこう。まさにこの1964年、議論になっている国際関係の中で、これらの面に関する山積みの問題について話しあうために、ジュネーブ会議が開催された。我々の使節による警告と予想は完全に的中し、経済的に他国に依存する国々には不幸に見舞われたのだ。

 

 

キューバの関与によって、せめてアメリカ合衆国にあからさまな会議開催を提言させないようにできればと思う。そしてそのアメリカ合衆国政府にも、キューバへの薬物販売を近々禁止することにしてもらったらどうかと思う。そうすることによって、キューバ国民に対する経済封鎖を行うような攻撃的性質を覆い隠そうとする博愛主義者の仮面を自ら完全に引き剥がすことができるのだ。

 

 

植民地主義によって残された傷跡は、民族の発展を阻害し、それは政治的関係の中においてのみ表現されるものではないということも繰り返しておく。いわゆる貿易条件の悪化とは、原材料生産国と工業製品生産国の間の不平等な取引の結果にすぎない。そういう取引が市場を支配し、価値の対等な交換が公正に行われているという幻想を作り出している。

 

 

経済的依存状態にある国民が資本主義市場から自らを開放し、社会主義国に対する強固な経済封鎖の中で、搾取される者と搾取する者の関係を一新させない限りは、着実な経済成長など望むべくもない。いくつかのところでは、退行してくことになる。小国は帝国主義と植民地主義政治的支配の下に突き落とされるのだ。

 

 

特別使節のみなさん、明確にしておかなかればならないのは、カリブ海の領域においてキューバに対する侵略のための作戦行動と準備が行われているということだ。とりわけニカラグアの海岸線上、同様にコスタリカパナマ運河の地域、プエルトリコビエケス島、フロリダともしかするとアメリカ合衆国の領域内、そしておそらくホンジュラスでも。こういった地域ではキューバや他国の傭兵たちが訓練を行っているのだが、その目的とされているものは、平和を目指すには最善ではない。大きなスキャンダルの後で、コスタリカ政府が国内キューバ難民の全訓練地に対する撤去命令を下したと言われている。

 

 

この立場が誠実なものかどうかは誰にも分からないし、単純なアリバイなのかどうかも分からない。そこで行われる傭兵の訓練は何らかの過ちを起こしそうになっている。我々が過去に非難した侵略の基盤の存在が現実的なものであるということを、みなさんに認識していただきたい。キューバを攻撃するために傭兵を訓練することを公に行い促進している国の政府の国際社会での責任について、世界中の人々に考えていただきたい。カリブ海の様々な箇所で傭兵の訓練が行われているというニュースと、アメリカ合衆国の新聞で全く当たり前のように書かれているこういった行動への政府の参加のニュースに、注意をしておくべきだ。ラテンアメリカからは、公には明らかに抗議の声が全く上げられていない。ここには、アメリカ合衆国政府がその尖兵の駒を動かすことについての冷笑主義が表れている。

 

 

米州機構の外相たちは鋭い目を持っており、キューバの象徴を見ているし、アメリカ合衆国の人間がベネズエラに兵器を置いていることの「動かぬ」証拠を見つけている。しかし、外相たちがケネディ大統領の言葉に注意を払おうとしなかったのとちょうど同じように、アメリカ合衆国において侵略の準備が行われていることまでは見ていない。アメリカ合衆国は図々しくもプラヤ・ヒロンでのキューバ侵略(1961年4月ピッグス湾事件)を宣言したというのにだ。いくつかの事例において、我々の革命に対するラテンアメリカ支配層の憎悪によって引き起こされた盲目状態が散見される。そして、さらに悲しく嘆かわしいことに、それは富の輝きに目のくらんだ人々が陥る盲目状態なのだ。

 

 

よく知られているように、カリブ危機(キューバ危機)とか呼ばれている大きな騒動の後で、アメリカ合衆国ソビエト連邦とのしっかりとした関係づくりに着手した。アメリカ合衆国による侵略の継続的活動を示す特定の種類の兵器を撤収させるか否かという緊張の高まりによって、正当な行動と原則的防衛としてキューバでの核兵器設置が已む無しとなったのだ。プラヤ・ヒロンへの傭兵による攻撃と我々の祖国に対する脅威がそうであったのと同じように。

 

 

さらに、アメリカ合衆国は国連に働きかけて我々の領域に立ち入り調査をさせようとしている。しかし、我々はそれを断固として拒否するものである。アメリカ合衆国、そして世界のどんな国であれ、キューバがその国境内で保有する兵器の種類を決定して良いという権利があるなどと、我々は認めないからだ。

 

 

このような状況下において、派閥に関係なくその同等の義務に忠実であるためには、多国間の合意が不可欠だ。フィデル・カストロはこう言っている。「国民と自律的民族固有の権利として、全人類の権利として、主権という概念が存在する限り、我々の仲間たちがそこから排除されることは是認しがたい。このような原則により世界が統治される限り、そして世界に遍く人民たちの誰もから受け入れられ認められることで普遍的正当性を持つ概念によって世界が統治される限り、そういった権利を我々から奪おうとする企みを黙って見てはおけないし、我々はそういった権利のいっさいを放棄するつもりもはない」国連事務総長のウ・タントもこのような理屈を分かっている。それなのに、アメリカ合衆国は新たな特権を手に入れようと企んでいる。それは恣意的かつ不法な特権であり、小国の領空を侵犯するものである。そのために、U-2などの偵察機が我々の国の上を飛び、領空を横切って行るのだ。我々は領空侵犯をやめさせるためにあらゆる必要な警告を行った。米国海軍によるグアンタナモ地帯治安部隊への挑発や、公海において我々や多国籍の船のそばを騒音を立てながら飛び回ることや、様々な旗を掲げた船に対する海賊的攻撃や、スパイの侵入、工作員と兵器を我々の島へ持ち込むことなどをやめさせるのと同様である。

 

 

我々は社会主義の確立を望んでいる。我々は平和を築くために奮闘する人間の味方だとすでに宣言したところだ。我々はマルクスレーニン主義者とはいえ中立国の一つである。我々のような中立国は、帝国主義と闘っているのだ。我々は平和を求めている。国民のより良い暮らしを築こうとしている。だからこそ、アメリカ合衆国の連中による挑発にできる限り乗らないようにしているのだ。しかし、我慢の限界というものがあるのも事実だ。こういった連中は平和を求める我々に非常に高い対価を払わせようとしている。言っておくが、支払える対価が尊厳というものの範囲を超えることはない。

 

 

キューバがもう一度だけ確認しておきたいのは、適当と思われる程度の兵器を領域内に保有する権利と、地上のどのような権力であれ、それがいかに強大だったとしても、我々の領土、領海、領空を審判する権利など認められないということだ。

 

 

キューバがあらゆる総会における集団性質的必然性を想定するならば、文字通りそれらを満たすことになるだろう。このことが実現されない限り、他のあらゆる国々同様にキューバは全ての権利を守る。帝国主義の要求に対して、我々の首相はカリブ海の平和維持に必要な5つの点を並べている。

 

 

1.世界の至る所でアメリカ合衆国が我が国に対して行っている、経済封鎖とあらゆる経済及び貿易に関する圧力の停止

 

 

2.飛行機と船舶による武器と爆弾の持ち出し及び持ち込み、傭兵部隊の組織、スパイと工作員の侵入、アメリカ合衆国と他の共犯関係にある諸国の領域内から一貫して行われる活動など、キューバに対する破壊工作の停止

 

 

3.アメリカ合衆国プエルトリコに存在する基地を拠点とする海賊行為の停止

 

 

4.アメリカ戦闘機と軍艦によるあらゆる領空及び領海侵犯の停止

 

 

5.グアンタナモ海軍基地からの撤退とアメリカ合衆国が占拠するキューバ領域の返還

 

 

 

 

こういった初歩的な要求ですら全く実現されず、我々の軍隊はあいかわらずグアンタナモ海軍基地からの挑発行為を受けている。グアンタナモ基地は盗賊の巣窟になり、そういう連中が我々の領域に侵入する際の拠点になっているのだ。この総会に参加している皆さんをうんざりさせるような、ありとあらゆる種類の挑発行為の数々について詳細をお話しよう。12月初めの頃までには、その回数は1964年の一年間で1323回に及んでいたということを述べれば既に充分にうんざりする話だろう。国境線の侵犯、アメリカ合衆国支配下の領域からの物品の持ち込み、アメリカ合衆国の男女の性質である露出過剰な姿を見せつける行為、口頭での侮辱など、軽い嫌がらせのようなものも含んではいるが。他にも、我々の領域に向けた小型銃器の発砲、キューバ国旗への侮辱行為など、より深刻なものがある。国境線に侵入したり、キューバ側の建物の中で発砲し始めたりというのも、極端な挑発行為の例として存在する。今年は78回に及ぶ発砲事件があり、痛ましいことに一人の人間が犠牲になった。その兵士の名はレイモン・ロペス・ペーニャといい、北端の海岸線から3.5キロ離れた米軍基地から2発の射撃を受け命を落としたのだ。この常軌を逸した挑発行為は重く受け取らざるを得ないものであり、それが行われたのは1964年7月19日の7時7分のことだった。7月26日、キューバ政府の首相は公式に声明を出し、「再びこのようなことが起きるようであれば、侵略者を駆逐すべく軍隊に命令を下すことになるだろう」と述べた。そして同時にキューバ軍配備の前線を国境線からより離れた位置まで後退させ、必要とされる防衛態勢を構築するよう命令が下されたのだ。挑発行為が340日間で1323回行われたということは、1日4回のペースということになる。キューバ軍が士気と完璧な規律を持っていたからこそ、自制心を失うことなく無数の悪意に抵抗することができたのだ。

 

 

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