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Teoreamachineの小説ブログ

チェ・ゲバラ国連演説全訳 その3

 

47ヶ国が集まりカイロで開催された第2回非同盟諸国首脳会議において、全会一致で採択されたことを読み上げよう。

 

 

  国家への圧力と、自身のイデオロギー、政治、経済、文化的思想に基づく解放と発展の阻止の手段として実用される外国の軍事基地という懸案事項について、領域内に外国の軍事基地が無くなることを求めて、他国に軍隊と軍事基地を保有する全国家に対し即座に基地を撤去するよう訴える国々に対して、非同盟諸国首脳会議は惜しみない支援を与えることを宣言する。アメリカ合衆国グアンタナモ(キューバ)軍事基地の維持について、それがキューバの政府と国民の意思に反するものであり、ベオグラードで開催された第1回非同盟諸国首脳会議での採択に盛り込まれた規定に反するものであり、キューバの主権と領域不可侵性を侵害するという性質のものであるというのが、非同盟諸国首脳会議の見解である。

 

 

キューバ政府がグアンタナモ基地をめぐるアメリカ合衆国との論争に対等な立場での話し合いによる決着をつける用意があると示していることについて、非同盟諸国首脳会議はアメリカ合衆国が基地の撤去についてキューバ政府との交渉の場を設けるよう訴える。

 

 

カイロでの会議で出された要求にアメリカ合衆国政府は何ら回答をよこしてはおらず、キューバ領域の一部を占拠する軍隊によって、先ほど詳細に述べたような侵略行動の実行をはじめとするそういった行為を漠然と続けようとしている。

 

 

アメリカ合衆国植民地省とも呼ばれる米州機構が、その中からキューバを排除してもなお、参加国に対してキューバとの外交及び貿易関係を断絶するよう迫っている。米州機構は我が国へのいついかなる口実によってであれ侵略を正当化し、最も基本的となるはずの国際法を破り、国連など完全に無視している。ウルグアイ、ボリビア、チリ、メキシコはこういったやり方に反対し、メキシコ合衆国政府などは米州機構で承認された経済制裁措置を認めていない。それ以来、キューバはメキシコ以外のラテンアメリカの国々とは関係が途絶えている。このことによって、帝国主義による直接的侵略の必要条件の一つを満たすことになってしまうのだ。

 

 

我々のラテンアメリカへの関与について今一度明確にしたいのは、それが我々を団結させる結び付きに基づいているということである。その結び付きとは、我々の話す言語、我々が守る文化、我々が共に仕える主人などだ。アメリカ合衆国の植民地支配の軛からラテンアメリカを解放したいと願う理由は、ただそれだけである。ここに集うラテンアメリカ諸国がキューバとの関係を再構築する決断をするならば、我々は平等を原則とし、世界の中での自由な国家という称号は、キューバ政府が天から授かったものだったという見解を持つことなく、それをやる意思がある。我々は自由を求める戦いの日々をくぐり抜け、自らの血によってその称号を勝ち得たのだ。米軍連中の侵略に対して海岸線を防衛する中で、自らの血によってそれを手に入れたのだ。

 

 

他国の内部における問題についてキューバが干渉を行っているのではないかという批判に我々は同意しないが、自由を求めて懸命に戦う人々に共感していることは否定できない。自らが道義的に支援する世界に対して、はっきりかつ断固として自らの見解を述べるという義務をキューバの政府と国民は果たさなければならないし、国連憲章で宣言されている完全なる主権を手にする権利の実際的行使を求めて世界の至る所で戦う人々との団結を、そのよう人々に代わって示さなければならないのだ。

 

 

そもそも干渉を行っているのはアメリカ合衆国なのだ。もうずいぶんと長年に渡って、ラテンアメリカへの干渉を行ってきた。前世紀の終り以来、キューバはそれを真実として経験してきている。我々のみならず、ベネズエラニカラグア、中米国の全体、メキシコ、ハイチ、ドミニカ共和国も同様の経験をしてきた。近年、我々のような国民とは例外的に、パナマは直接的な侵略を経験することになった。運河地帯にいた海兵は冷血にも丸腰の人々に向かって銃撃を開始したのだ。ドミニカ共和国の海岸線は、トルヒーヨ殺害によるドミニカ国民たちの激昂から逃れようとする米軍艦隊に侵犯された。コロンビアでは、その首都がガイタン暗殺を引鉄とする反乱軍の襲撃により占拠されることになった。アメリカ合衆国は軍隊任務という形で、内乱鎮圧、多くの国の思惑を反映した軍隊の組織、近年においてラテンアメリカ大陸で頻繁に繰り返されてきたクーデターに参加し、影でこそこそと干渉を行っている。米軍は現実に、ベネズエラ、コロンビア、グアテマラといった自らの自由のため武器を取り闘う国民たちを抑圧する行為に手を貸しているのだ。ベネズエラでは、米軍は兵団と警察に指示するだけでなく、反乱を蜂起した地域の小作農民のような人々に対して空爆により直接的に虐殺行為を行っているのだ。そしてあらゆる圧力行使を意のままにするアメリカ合衆国の仲間たちは、直接的干渉をますます行うようになっている。帝国主義者はアメリカ大陸に生きる人々を抑圧する準備を整え、国際犯罪組織を作り上げようとしているのだ。

 

 

アメリカ的自由体制を守ることを求めて、アメリカ合衆国ラテンアメリカに干渉した。この総会がより成熟したものになり、アメリカ合衆国政府に国内に住む黒人とラテンアメリカ人が生きていくことに対して必要な保証を与えることを求める時がくるだろう。彼らの多くはそこで生まれたか養子になったかであり、アメリカ合衆国の市民なのだ。

 

 

自らの子供たちを殺し、肌の色を理由に日常的に子供たちを差別する人々、自由な人間であるという正当な権利を求めたという理由で黒人を殺した人間を放任し、保護し、むしろ黒人たちを罰している人々、そういった人々がいったいどうして自らを自由の守護者だなどと考えることができるというのか。この総会がアメリカ合衆国に自らの行動について説明をするよう求めるような立場にないことは理解している。しかしながら、はっきりと認めさせなければならないのは、アメリカ合衆国の政府が自由にとっての最高の守護者ではなく、世界の人民と大部分の国民に対して搾取と抑圧を行う張本人であるということだ。

 

 

使節の中にはキューバと米州機構の対立についてあいまいな態度で語る者もいるが、我々は歯に衣着せぬ言葉でそれに答えよう。そして我々が求めるのは、ラテンアメリカの国民たちが、盲従と裏切りを行う自分たちの政府に対し、民衆の意思に背く行為を行った責任を取らせるようにすることだ。

 

 

特別使節であるキューバは自由な主権国家であり、何者によっても拘束されず、領域内への外国資本を受け付けず、植民地総督によって政治に対する支配を受けずに、頭を高く上げてこの総会において声を上げ、すでに動き始めている「アメリカ大陸における自由の領域」という言葉の正当性を示すことができる。我々が示した実例はこの大陸において、グアテマラ、コロンビア、ベネズエラといったところですでに一定の広がりを見せているのと同じように、実を結んでいく事だろう。

 

 

弱小な敵も取るに足らない軍隊もあり得ない。もはや孤立した国民などあり得ない。これからそれを示すためにハバナ第2次宣言を読み上げよう。

 

 

ラテンアメリカには弱い国など一つもない。それぞれが2億人におよぶ共同体を形成する同胞である。同胞たちは皆同じような惨めさに苦しみ、同じ傷を心に抱き、同じ敵と戦い、同じ素晴らしい未来を夢見て、世界中に生きる全ての誠実な男女と団結しようとしているのだ……

 

 

我々が目にしているこの叙事詩は、飢餓に苦しむインドの群衆や、土地を持たない小作農民、そして搾取される労働者によって著されようとしている。進歩的な群衆、誠実で優れた知識人、そして苦しみを抱く我らがラテンアメリカの大地に溢れる無数の人々によって著されようとしている。それは群衆と思想による闘争なのだ。この叙事詩は帝国主義によって虐待と蔑みを受ける我々の同胞たちの力によって前に進んで行くだろう。我々の同胞は今日まで一顧だにされずにいたが、今この時、そのまどろみを振るい落とすようにして眠りから覚めようとしている。帝国主義者は我々のことを弱小で従順な群れだと考えているが、しかし今はその群によって脅かされようとしている。アメリカ合衆国の連中による独占的資本主義が、自らの墓堀人の姿を、2億人のラテンアメリカ人の巨大な群れの中にみているのだ……

 

 

そして今、この大陸の端から端に至るまで、その住人たちが時が来たということを示している。彼らの正当性を証明する時が来ているのだ。この名もない群衆、有色人種のアメリカ大陸、雲に覆われ、言葉貧しいアメリカ大陸、その至る所で同じ悲しみと打ち砕かれた夢を抱いて声を上げている。この群衆は確実な足取りで自らの歴史を始めようとしている。自らの血でもってその歴史を著し、その歴史のためらば、苦難も死も受け入れる覚悟をしているのだ。

 

 

アメリカ大陸の山々と草原で、平地と密林で、荒野と都市の往来で、広大な海と川の岸辺で、この世界は身震いをし始めている。おそるおそる前に手を伸ばし、己の手にするもののために死を覚悟し、500年間に渡りどんな人間からも嘲笑されてきた権利を勝ち取ろうとしている。そう、今こそ歴史はアメリカ大陸の貧しい人々について考えることになるのだ。搾取と冷遇を受けてきた人々、自らの手でその誕生から今に至る歴史を著し始めることを決断した人々について。すでにそういう人々は路上に現れて、その足で立ち、何日も何日も、彼らの権利を手にするために、統治機関のある頂上へ向けて長い距離を行進している。

 

 

あるいはすでに、その人々は石や棒切れ、マチェーテで武装した姿をあちらこちらで毎日でも見せており、土地を占拠し、自らの物であるその土地に鉤を深く差し込んで、自らの生と共にそこを守っている。象徴を、スローガンを、旗を手にし、それを山々や平原を吹き抜ける風にはためかせた姿を見せているのだ。怒り、正義の希求、足蹴にされ踏みにじられた権利を求める叫びによって生まれたうねりは、ラテンアメリカの大地を覆い尽くそうとしており、もはや止まることはないだろう。来る日も来る日も、そのうねりは膨らみ続ける。そのうねりは、あらゆる箇所において、その労働によって富を築き、その手によって歴史の糸を紡いでいるような、膨大な数に上る多数派の人々から成っているのだ。長きに渡る服従の残酷な眠りから、今こそ人々は目を覚まそうとしている。

 

 

この人間たる大きな群衆は「もうたくさんだ!」と声を上げ、行進を始めたのだ。彼ら巨人の行進は、真の独立を掌握するまでは止まることはない。もちろん今までには報われぬ死も一度ならずあっただろう。しかし、ここで死ぬ人間は、プラヤ・ヒロンで死んだキューバ人のように死ぬのだ。自らの真実と不撓不屈の独立のために死ぬのだ。

 

 

ここにおられる全ての特別使節の皆さん、ラテンアメリカ大陸に満ちる新しい意志は、日々はっきりと聞こえている叫び声の中で作られた宣言である。彼らには、闘うための、侵略者が武器を抱える手を動かないようにさせるための決意があり、その宣言は彼らの決意についてのくつがえしようのない表現なのだ。世界の、とりわけソビエト連邦に先導される社会主義陣営に生きる、全ての人々への理解と支援の意を込めて一つの叫びを上げよう。

 

 

祖国か死か!

 

(了)