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Re: Writing Machine

Teoreamachineの小説ブログ

最も純粋な子供達のために その12

 

 家用車の運転席に座らされた桐原和弘は後ろの席で拳銃を構える桐原玲に命令されるがままに車を走らせる。ちらりと助手席に目をやると同じようにそこに座らされている桐原由美が自分をどうにか落ち着かせようとしているかのように目を閉じているが乱れた呼吸がその動揺をはっきりと表しており鼻から漏れる息の音が運転席にいても聞こえていた。数年前の桐原玲の顔には高慢な少年の冷笑ばかりが浮かんでいたが今目の前にいる男の顔にはわずかな刺激であらゆる方向へと炸裂する暴力衝動から生まれる緊張感が横溢している。桐原和弘も桐原由美もその勢いに気圧されて何一つ言葉を発することができずにどこか見知らぬ場所へと自らを運んでいかざるを得なかった。桐原和弘の手のひらからは異常な量の汗が噴き出しておりハンドルを切るだけで手が滑りそうなほどだった。

 やがて辿り着いたのは築二十年以上は経過していそうなアパートだった。車を降りた桐原由美と桐原和弘は拳銃を構えた桐原玲に追い立てられそのアパートの一室のドアの前に立った。

 私たちを殺すのか?

 額から冷や汗を流し続ける桐原和弘が喉を詰まらせながらも必死で言葉を発した。

 別にお前がそれを知る必要は無い。

 桐原玲は拳銃の先で桐原和弘の背中を突いてそのドアを開けさせ隣で震えている桐原由美ともども中に押し込む。桐原由美は一瞬振り返って哀願するような目で桐原玲を見つめたが桐原玲は父親と同じようにその背中を突き飛ばし部屋の中へと歩かせた。

 居間に入った桐原和弘と桐原由美はほぼ同時に悲鳴を上げる。そこには首輪を付けられた一組の中年の男女が裸で鎖で柱に繋がれていた。

 何?これは何なの!

 桐原由美は取り乱して叫び声を上げる。

 この二人か?彼女の両親だよ。

 そう言って桐原玲は白澤明歩を指さす。白澤明歩は冷めきった目で自分の両親と桐原玲の両親を交互に見ていた。白澤明歩の父親である白澤健次の顔には散々殴られた跡がありすでに腫れ上がっている。そして母親の白澤裕子はやせた体を丸めて膝を抱え座っていた。

 お前らもこうするんだ。

 桐原玲が桐原由美の額を拳銃の先で突いて押しのける。

 やめなさい。玲。お願いよ。

 桐原由美は目に涙を溜めて言ったが桐原玲はそこに自分が母親なのだという立場を誇示しようとする態度を読み取って苛立ちを露にする。

 早くしろ。クソが。

 そう言うと同時に桐原玲がフランス語でカウントダウンを始める。

 Trois deux un……zéro!

 そう叫ぶと同時に何もできずにじっとしていただけの桐原由美の顔面を銃床で殴りつけた。鼻と口から流れる血が畳の上に落ちて音を立てる。顔面を血で濡らして震える桐原由美に近づいた桐原和弘はその肩を抱きながら服を脱がし始める。

 すまん。でも今はこうするしかないだろう。

 怯えた顔で見つめる桐原由美をなだめるような声で桐原和弘が言う。やがて桐原由美を裸にして柱に繋がる首輪を付けた桐原和弘がこれが何かの冗談なのかどうかを改めて確認するかのように桐原玲の顔色をうかがったが冷笑的でありながら強烈な緊張感に満ちたその表情からは全く本気だということしか読み取れなかった。恥辱に震える桐原由美から目を背けた桐原和弘は自らもまた裸になり首輪を付ける。

 その一部始終を今まで黙って見ていた白澤健次が桐原玲に怒りの表情を向ける。

 てめえ本気でイカれてんのか?何がしてえんだ全く。

 白澤健次が声を荒げて凄んでみせるが桐原玲にはどこにでもいるチンピラが陳腐な脅し文句を吐いているだけにしか聞こえなかった。桐原玲は白澤健次に容赦無い蔑みの視線を浴びせる。

 そうだな……。せっかくみんな裸になってもらったことだし。夫婦でセックスでもしてもらおうか。

 はあ?

 白澤健次が眉間にしわを寄せる。

 自分の嫁さんとセックスしろよ。娘の見てる前で。いつもやってるだろ。それともごぶさたすぎてどうするのか忘れたか?

 ふざけんな!

 白澤健次は叫ぶと同時に桐原玲に飛びかかる。しかし柱に繋いだ鎖はあまりに短くその先の首輪で自分の首を絞めてしまい床に崩れ落ちて咳き込む。桐原玲はその滑稽さに笑い声をもらす。

 クソガキが!殺してやる。

 白澤健次は首輪を外そうともがき始めるが金属の部品で固く接合された首輪は全く外れない。

 良い大人なんだから状況を受け止めろよ。おっさん。

 桐原玲が白澤健次めがけて発砲する。弾丸は白澤健次の右足の親指に命中しちぎれた肉片が音を立てて部屋の中を転がった。白澤健次は子供のような悲鳴を上げてのたうち回る。桐原玲は声を出して笑っていた。そして部屋の中を見回した桐原玲は部屋の隅で小さくなって震えている桐原和弘と桐原由美の二人と目が合った。

 何やってんだ?お前らも早く始めろよ。

 そう言われた二人の顔からは完全に血の気が失せていた。白い顔の桐原和弘が桐原由美に視線をやるが桐原由美は下を向いたままかたくなに誰かと目を合わせることを拒んでいた。

 早く始めろ。

 そして桐原玲はまたカウントダウンを始める。

 Trois deux un……

 分かった!分かったから。もう撃たないでくれ。

 桐原和弘が頭を垂れて言った。

 좋아.

 桐原玲が韓国語で呟いてうなずく。桐原和弘はひどく疲れた表情で妻の方へ向き直り強張っているその体を畳の上に寝かせ力を入れて股を開かせた。呆然とした桐原由美は全く抵抗することも言葉を発することも無くただ天井のシーリングライトの光を見つめたまま動かない。桐原和弘は懸命にペニスをしごいて固くさせ桐原由美の膣に挿入しようとするがそれは全く濡れておらずさらには自分の勃起が中途半端で入れようとしても上手くいかなかった。

 つばでも付けてろ。

 桐原玲が笑う。桐原玲和弘は無言のまま目を合わせずに口の中につばを溜めてそれを自分のペニスの上にだらだらと垂らした。そしてぬるぬると滑る唾液を亀頭と桐原由美の膣口に塗りたくってから再びペニスをしごいて勃起させそれを膣へと挿入した。桐原由美がかすかに息を漏らし桐原和弘は不器用に腰を動かし始める。桐原玲はその姿を見ながらさも愉快そうに笑っていた。そして仰向けに寝転がって荒く息をしている白澤健次の横に座っている白澤裕子にお前もやれとばかりに拳銃の先を動かして指図する。

 でも……。

 白澤裕子は神経質そうな上目遣いで気弱な声を出す。

 別にそいつが動けなくてもお前が頑張れば良いんだよ。

 白澤裕子は自分の娘の方に目をやるが白澤明歩はそれを無視して顔を背ける。四つん這いになった白澤裕子はその姿勢のまま遅鈍な動きで夫の股間に近づいて太ももの間に下がったペニスをつまみ口に含んだ。フェラチオを続けていると白澤健次のペニスは徐々に固くなり頃合いを見計らった白澤裕子はそれを握りながら夫の上にまたがり自らの中に挿入すると勢いよく腰を降り始めた。白澤健次の顔が次第に紅潮し足の指の痛みを忘れたかのように声を出しながら白澤裕子の腰の動きに合わせて身をよじる。二組の夫婦は対照的なセックスを続けていた。かたや自分たちの息子の視線を意識して乏しい表情でおそるおそる交わる桐原由美と桐原和弘に対して白澤裕子と白澤健次はこの期に及んで快感を貪ろうとするかのように娘の視線などお構い無しに激しく体をくねらせて交わっていた。

 

 

 子供達を目の前にしたセックスを終えた二組の夫婦は四人とも黙ったまま荒く息をしていた。その光景を見ていた白澤明歩が桐原玲に何かを確認するかのような目配せをする。桐原玲は首を横に振って笑う。白澤明歩の表情に戸惑いの色が浮かんだが桐原玲はまあ見てろと小声で言う。

 気持ち良かったか?

 小馬鹿にした口調で桐原玲が訊くが二組の夫婦は誰もそれに答えようとはしなかった。

 そうか。やっぱりもの足りないだろう。

 桐原玲が笑う。四人が驚いた表情で桐原玲を見た。

 安心しろよ。これからがメインイベントなんだ。

 その存在を誇示するかのように桐原玲が順番に拳銃を四人の顔に向けていた。

 さあ。お互いの相手を交換してセックスしてもらおう。

 桐原玲のその言葉を聞いた瞬間に桐原由美が小さく悲鳴を上げて失神した。桐原和弘が何かを言うために立ち上がろうとしたが桐原玲は素早くそれに反応して拳銃を向ける。それからしばらく膠着状態が続いたが最初に動いたのは右足の親指を失った白澤健次だった。

 起きろよ。奥さん。

 白澤健次が桐原由美の頬を軽く叩くと桐原由美が目を開けた。覆いかぶさるようにして自分の顔を覗き込んでいる裸の白澤健次の姿に気付いた瞬間に桐原由美は悲鳴を上げてそこから逃れようとしたが白澤健次は両腕をつかんで押さえつけ身動きが取れないようしてしまった。白澤健次のペニスは既に勃起して固くなっていた。濡れていない膣口に無理矢理ペニスを挿入した白澤健次は泣き叫ぶ桐原由美のことなどお構い無しに腰を振り始める。桐原和弘は次に取るべき行動を決めあぐねているかのように硬直してその光景を見ていたがその背中に触れる手に気付いて振り返る。裸の白澤裕子が桐原和弘に体を寄せ自分の胸を押し付けた。白澤裕子は桐原和弘の妻とは違って既婚の中年になっても男とセックスしたりすることを意識しながら生活しているような雰囲気を持っていた。男を誘惑することにためらいや気恥ずかしさなど感じる様子はなく桐原和弘から自分の尻が艶かしく動いているのが見えるようにしながらフェラチオを始める。白澤裕子の舌の動きを見つめながら桐原和弘は自分のペニスがどんどん勃起していくのを感じていた。もはや妻の方は見ないようにしていた。白澤裕子の乳首にしゃぶり付きながら体を倒すとそのままセックスを始める。その横では白澤健次に体を抱えられた桐原由美がバックから犯されていた。そのセックスの間ずっと桐原玲が口を開けてげらげらと笑っていた。

 やがて桐原由美の膣内に射精した白澤健次の方を見ながら桐原玲が白澤明歩に拳銃を渡そうとする。

 殺せ。

 悪魔に取り付かれたかのような顔をした桐原玲がささやく。白澤明歩は首を横に振った。

 そうか。まあどっちがやっても同じことだ。

 桐原玲は独り言のように呟いて桐原由美と繋がったままの白澤健次を丸めたごみを投げ捨てるかのように撃ち殺す。数発の弾丸が白澤健次の頭と胸に撃ち込まれ飛び散った血が桐原由美の背中に広がった。白澤健次がゆっくりと畳の上に崩れ落ちそれに気付いた桐原由美は声も出さずに気絶した。

 見ろ明歩。家族は存在しない。

 桐原玲が言う。白澤明歩は無言のまま涙を流していた。その表情には憎しみも悲しみも喜びも安堵もなかった。ただ無表情で目の前の光景を見ながら涙を流すだけだった。桐原玲が白澤明歩の手を引いて部屋を出て行く。桐原和弘と白澤裕子は恐怖で動けなくなり座位で繋がったままになっていた。桐原玲はその様子を見て冷笑しながら首輪の鍵を取り出す。

 アプンノ オカ ヤン。

 桐原玲はアイヌ語でそう言うと白目を剥いて股を開いたまま気絶している桐原由美の体に鍵を投げつけ部屋のドアを閉じた。

 

 

最も純粋な子供達のために その13へつづく――