読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Re: Writing Machine

Teoreamachineの小説ブログ

最も純粋な子供達のために その18

  

 瀬夏美は産婦人科の待合室で四歳になる息子の七瀬星海の相手をしながら診察の順番を待っていた。七瀬星海は大きくなった母親のお腹を好奇心に満ちた目で見つめながらそれをなでる。

 空海くん。空海くん。

 もう既に決まっている弟の名前を呼んで七瀬星海は母親のお腹に耳を当てた。七瀬夏美は微笑みを浮かべて愛おしそうに息子の頭に手を置いた。

 いつ空海くん産まれてくるん?

 もうすぐよ。

 明日?

 もうちょっと先。

 早くできんの?

 だめよ。空海くんがもうちょっと大きくなるまで待ってあげてね。

 まだ大きくなるん?

 そうよ。

 七瀬星海はまた母親のお腹をなでた。七瀬夏美は顔を上げて壁にかかった時計を見る。昼の二時を回っていた。

 

 

 診察を終えた医者から順調ですと言われ病院を後にした七瀬夏美はタクシーを拾うために七瀬星海の手を引いて駅前まで歩いて行った。通りに出ると人が多いので病院の裏手に回り路地を抜ける。駅前の大通りまで出てくると路地裏とは打って変わってそこを往来する人があまりに多く七瀬夏美は思わずめまいがしそうになった。駅のロータリーに並ぶタクシーを拾うために駅の正面の交差点に立ち横断歩道の信号が変わるのを待つ。七瀬星海が空を見ていた。七瀬夏美もそれにつられるかのように空を見上げる。天気のいい日で雲は少なく秋の澄んだ空気のおかげで透明感のある青色が静寂を湛えた空に広がっていた。やがて信号が変わり横に並んだ沢山の人々が横断を始め七瀬夏美は息子の手を引いてゆっくりとした足取りで道を渡る。頭上に広がる青空に気を取られたままの七瀬星海の歩みはのろくそのままでは信号が変わってしまいそうになったので七瀬夏美は息子の手を握って早く行こうねと声をかけ足を速めた。

 ようやく横断歩道を渡り切ろうとしたとき七瀬夏美は点滅する信号機の下に黒い革のコートを着た異様な雰囲気の男が立っており鋭い目でこちらを見ていることに気づいた。七瀬夏美は視線をそらして顔をふせ息子の手を引いてできるだけ早く信号を渡りそこを離れようとしたが目の前の男はコートの下に手を突っ込むとそこから重厚な雰囲気を備えたショットガンを取り出して構える。その瞬間身震いした七瀬夏美は危険を察知して七瀬星海を自分の背後に隠すようにその手を強く引き寄せる。

 मैंतुम्हेंमार

 そう言った男の長い前髪の下からのぞく目が七瀬夏美を捉え男は何の躊躇も見せずに引き金を引いた。強烈な火薬の炸裂音に七瀬星海が泣き叫んで言葉を発したがすでにあごから上にあったはずの顔や頭が散弾で吹き飛ばされた七瀬夏美にはその声を認識することができなかった。

 

 

最も純粋な子供達のために その19へつづく――