Re: Writing Machine

Teoreamachineの小説ブログ

僕らが何者でもなくなるように その1

 かしい人から連絡が来た。かつての同級生。久しく途絶えてなかった交流であっても、その名前と言葉を聞けば、いろんなことが鮮やかによみがえる。記憶が、記憶の中でもとりわけ感情と結びついているような、淡い色彩を帯びたような記憶たちがよみがえって、僕はいくらかの気恥ずかしさと愉快さに胸をくすぐられる。僕はとりわけ彼と仲が良かった、決して気の合う人間が多いわけではない僕が、最も気を許せたのは、この同級生、タカユキだった。

 タカユキからの連絡は、パーティーへの招待だった。東京で立ち上げたアプリ制作会社が大きくなり、地元に支社を開設することになったので、その記念のパーティーをやるのだという。そういうパーティーにかつての同級生を招待するものなのだろうかという感じもしたが、特に出席を避ける理由も僕にはなかった。あるいは何か意図があるのかもしれないし、それとも忙しい中で地元に姿を見せるせっかくの機会なので、ということかもしれない。いずれにしろ僕は素直に嬉しかった、同級生の中でも飛び抜けて世間的に成功したタカユキに会うのは、もうそんなに簡単なことではなくなっていたし、事実、もう十年くらいは会っていない。それに、僕はもしかしたら、タカユキと二度と会うことはないんじゃないかとすら思っていた。タカユキは、二度と僕らには会いたくないと考えているんじゃないかーー僕はあのころのタカユキのことを回想して、そんなふうに思っていた。だからこの招待は正直意外なものであって、タカユキとの友情を決して忘れてはいなかった僕にとっては、とても嬉しい知らせだったのだ。

 

 

僕らが何者でもなくなるように その2へつづく__