Re: Writing Machine

Teoreamachineの小説ブログ

『君を想う、死神降る荒野で』 その1

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 の前で誰も彼もが弾け飛んでいく。その肉体は膨張し、破断し、変形し、飛散する。彼も誰もが死んでいく。見境なく。僕の父も母も兄も姉も妹も弟も。みんな死んだ。

 いや、そうじゃない。僕には初めから家族などいなかったのだ。死んだその肉体は、その無数の破片は、僕の父でも母でも兄でも姉でも妹でも弟でもない。僕は母から産まれたのではない。父に育てられたのではない。

 僕は地球の中核にある闇の底から吐き出され、マグマの産道を通ってこの地上に生まれたのだ。赤い赤い、熱い熱い、どろどろ、としたマグマに包まれ、無数に分断された肉体として、天を裂く叫び声と共に僕は生まれたのだ。そして目を開けたとき、僕は真っ暗な荒野の上にぽつんと置き去りにされていた。激しいマグマの奔流が嘘のように消えて、ざらざらごつごつとした大地が、僕の肉体を拒み、突き放していた。何も感じない、嬉しくもない、悲しくもない、怒りすらなくて。僕は、一つの空洞だった、一つの、いや、非数の、虚無だった。僕は、存在してはいない、存在してはならない。僕を受け入れてくれる場所など、この世界のどこにもない。孤独を超えて、僕は無として、いっさいの正しさから見放された間違いとして、そこに産み落とされてしまった。誰にも求められず、誰にも知られず、僕は剥き出しのまま、真っ暗な荒野に置き去りにされている。

 

 りい、りる。りい、りる。りる。りる。りる。

 頭の上では白い死神たちが鈴を鳴らしながら旋回している。死神たちはその大鎌で僕の肉体を刈り取ろうと白いまなざしを虚空に放る。

 りい、りる。りい、りる。りる。りる。りる。

 

 分断された僕の至る所で、肉体がうなり声を上げている。地鳴りのような音を立てて、僕の肉体が振動していた。僕は最も激しく震えている場所、《機械》と呼ばれているそれを持ち上げた。僕の体が虚無によって震えている。その震えが、僕の右腕の先端の《機械》を駆動させる。僕はその《機械》を肩の上に構えた。その《機械》で、あの死神たちを一匹残らず殲滅するために――。

 

 

『君を想う、死神降る荒野で』 その2へつづく――