Re: Writing Machine

Teoreamachineの小説ブログ

2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『君を想う、死神降る荒野で』 その6

兵舎の壁は研究所と違って灰色だが、同じ様に無機質な造りになっている。ただ、少なくとも少年たちが暮らすここにはいくらかの生活感があった。《機械》を操る兵士としてのみ存在意義を与えられた少年たちは、ほとんど無表情のまま過ごしている、それぞれの…

『君を想う、死神降る荒野で』 その5

地下へ、クロガネはエレベーターで降りていく。つるんとした球体のエレベーター内部の壁は、うっすらと暖かいオレンジ色をしていたが、それは嘘くさいデザインで、その施設が抱えている底なし沼のような陰鬱さは消すことができない。地下六十六階、そこでエ…

『君を想う、死神降る荒野で』 その4

七十四、七十五、七十六……七十七! ゼロシキは数を数えていた、体を切り刻まれ、ぼろきれのようになって消えていく死神の数を。機械は巨大な鷹の翼のように変形し、羽のような一枚一枚の刃が隆起して、はばたくように振り回すたび周囲の死神をからめとってバ…

『君を想う、死神降る荒野で』 その3

「クロガネ所長」 研究員のタカマツが、片手に資料のデータが入った電子ノートを持ってクロガネの部屋に入ってきた。 「どうした?」 「《機械》研究にかかる追加予算の要望の件です。文科省と防衛省が共同で作成した予算案が、ようやく国会で議決されました…

『君を想う、死神降る荒野で』 その2

「君は完璧だ」 最初のテスト、その終り、ドクター・クロガネは目を開けたゼロシキの顔を見てそう言った。 「何ということだろう! 君の心は、完全な虚無そのものだ」 クロガネはとても喜んでいた。自分の発明である《機械》の持てる潜在能力を最大限にまで…

『君を想う、死神降る荒野で』 その1

目の前で誰も彼もが弾け飛んでいく。その肉体は膨張し、破断し、変形し、飛散する。彼も誰もが死んでいく。見境なく。僕の父も母も兄も姉も妹も弟も。みんな死んだ。 いや、そうじゃない。僕には初めから家族などいなかったのだ。死んだその肉体は、その無数…