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Re: Writing Machine

Teoreamachineの小説ブログ

拷問

 

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前が今何を聞かれているのかを考えろ。 


 俊介はもう何度そう言われたのか分からないくらいになっていてそれはすでに満腹の胃に食べ物を押し込まれているような感覚そのものだった。もうやめてくれと俊介は三人の男達に哀願するけれども全く無視されてただ聞かれてることに答えろと命令される。ああそうだ俺が二ヶ月前に万引きしたことかそのことを正直に喋るんで解放して欲しいと言えば三人の中で一番背の高いひげ面の男が俺たちは警察じゃねえんだからそんなのはどうでもいいんだよと苦笑いして俊介はまた殴られる。口の周りはすっかり血だらけで前歯がぐらぐらしているのが舌先で触っても分かるくらいになっていた。それだけでなくて今度は一番背の低い小太りの男に傷口目がけて赤い粉末を塗りたくられてそれが激しい痛みを引き起こしていた。口の中と外が本当に火をつけられたかのように熱くなって俊介は叫び声とともに咳き込み赤いつばを吐いた。唐辛子よりもっときついハバネロみたいなものの粉末だなと分かった瞬間に汚ねえと小太りの男に棒切れで殴られてまた傷口がしみて俊介はひいひいと弱った声をもらす。


 俊介はもう何時間も拷問されている。しかも自分が何で拷問されているのか分からず聞かれることと言ったらお前が今何を聞かれているのかを考えろということだけだった。俊介は今までごく普通に生きて来た大学生でしかなく自分が何でこんな拷問を受けなければならないのか全く理解不能だった。いつものようにバイトから帰る夜道でいきなり黒塗りの車に横付けされたかと思うと三人の男達に囲まれリンチされたあげくに拉致されて今はどこかのマンションの部屋の中にいる。俊介は手足を縛られ椅子に座らされた状態で何度も何度も同じことを質問された。


 お前が今何を聞かれているのかを考えろ。


 三人の男が入れ替わり立ち替わりあの手この手で拷問しながらそう聞いてくる。俊介は今まで自分がしたことのある悪事を洗いざらい喋ってみたが全部見当違いのようで引き続き殴られた。悪事じゃないなら最近仲良くなった可愛い女の子のことで嫉妬されて俺はぼこぼこにされてるのかと思いわかった彼女からは手を引くと叫んだが馬鹿かお前はと一蹴される。


 頼むあんたらがいったい俺に何を聞きたいのかを教えてくれそれだけ教えてくれよもう何でも答えるから。


 俊介はもう苦痛に耐えられなくて涙声で食い下がるが今度は中くらいの背で筋肉質の男から顔面に蹴りを入れられた。俺たちはそれを聞いてんだよとその男は俊介を怒鳴りつける。


 俊介は再び哀願する。お願いします許してください僕には本当に何を聞かれているのか分からないんですだって僕はちまたにありふれた工業製品みたいに無個性な普通の大学生なんです。今日も大学へ行って三コマだけ講義を受けてその帰りに友達と飯を食ってコンビニのバイトに行ってそこに最近狙ってる子がいてその子と仲良く喋りながら働いてじゃあねバイバイって言って帰る途中であなたたちにさらわれたんですよ。四人家族で弟がいます。高校も大学も地元の人間なら誰でも行くようなところに通ってます。部活は中学でサッカー高校でもやってましたが長続きしなくて一年でやめました。今までやった一番悪いことは中学のときに知的障害のあるクラスメイトを友達とみんなで裸にして笑い者にしたことです。今まで付き合った人数は三人でセックスしたのはそのうちの二人で初めては高校三年生のときでした。大学へ入った理由は何となくですけど経済学部なので地元の銀行になんとか就職したいと思ってます。結婚は二十八歳くらいにしたいですけどそれまでにあと四、五人くらいとは付き合いたいなあって感じですよ。ねえねえ分かるでしょう僕は今までこんな拷問を受けるほど悪いことなんて何も知らないし他にもお金のもうかるような情報とかそんなのは持ってないですだって僕の銀行に入ってるお金は五万円くらいですよ親の仕送りとバイト代でなんとかやっていってるんだし。もう嫌だお願いします許して許して許してくださいよ。


 三人の男達はそれを聞いてひとしきり笑い転げた後で同時に俊介を何発も殴った。三人は口をそろえて言う。おいおいお前は全く聞かれたことに答えてないじゃないか俺たちが欲しいのはただ一つこの質問の答えだけだよ。


 お前が今何を聞かれているのかを考えろ。