Re: Writing Machine

Teoreamachineの小説ブログ

チェ・ゲバラ国連演説全訳 その1

f:id:teoreamachine:20131125021553j:plain

 

 

特別使節より国家の代表たる皆様へ

 

 

この総会へ招かれたキューバの使節としてまず第一に、世界の問題について議論するこの国連へ三ヶ国の新たなメンバーを歓迎する役目を仰せつかったことを喜ばしく思う。ザンビアマラウイ、マルタからお越しの大統領及び首相の方々、そして国民の皆さんにご挨拶を申し上げる。そして三ヶ国の皆さんには、帝国主義、植民地主義、そして新植民地主義に対して闘いを挑む、未だ非加盟である国々とも連帯していただきたいと私は思っている、そのことをまず始めに申し上げておきたい。

 

 

我々はこの総会の議長殿にもお祝いを申し上げる。(ガーナ人である)議長殿がその高い地位まで登りつめたということはとりわけ重大なことなのだ。それは歴史が新たな段階に達したことを反映しており、そこでは最近に到るまで帝国主義の植民地構造に支配されていたアフリカの人々の凱歌が鳴り響いている。今日、彼らのうちの大部分であり、膨大な数にのぼる各国民たちは、自己決定権の正当なる行使によって主権国家を建ち上げた。植民地主義の刻んできた時は最後の瞬間を迎え、アフリカ、アジア、ラテンアメリカに暮らす幾百万の人々が新しい人生を求めて蜂起し、自己決定と自国の自律的発展について干渉されない権利を求めている。

 

 

私たちが大統領閣下に望むことは、国連加盟諸国より委ねられた仕事を、かつて無い成功に導くということだ。

 

 

キューバの使節として私がここへやってきているのは、キューバが論争の中で最も重要な位置を占めていると表明するためである。十全の責任感をもってこの演説を行い、はっきりと率直に述べるという義務を全うしよう。

 

 

この総会を自己満足から振るい出して、前進を始めるようにしたいというのが我々の思いだ。委員会が仕事を始め、ひとつ対立が起きたくらいで止まらないようにしたいというのも我々の思いだ。帝国主義者たちはここで世界の深刻な問題を解決しようという気がなく、この総会を論点の定まらない演説合戦にしたがっているが、そんなことは絶対にさせない。この総会を、ただ単に第19回目のそれを開きましたというだけで終わらせてはならないのだ。我々は、解決を目指して尽力している。

 

 

我々にはそれをやる権利と義務があるはずだ。我々の国は最も摩擦が生じやすい場所のひとつなのだから。そしてまた我々の国は、小国が主権を持つことの正当性を支持する原則が毎日でも毎分でも試練に晒されている場所のひとつでもあり、この世界の中で行われる自由を求める戦いにおける前線のひとつでもある。我々はアメリカ帝国主義との間合いを保ちながら、民族というものが自らを解放し自らの自由を守るという現代に生きる人間にとって当然のことを、そして常よりそこにあるその実例を、行動によって示しているのだ。

 

 

今我が国に駐留している社会主義国の基地が日増しに拡大し、戦いに備えた強力な兵器を保有しているということは承知している。だが、刻一刻と変化する状況に、生き残りのために手を尽くすことを迫られているのだ。そのためには、内部の結束を維持し、自らの運命を信じ、断固たる決意を持って、祖国と革命を守りぬくために命を賭けて闘わなければならない。キューバはそのような状況に置かれているのであり、そういった国の顕著な見本となっている。

 

 

この総会で取り扱うべき数々の過熱した問題の中でも、我々にとってとりわけ重要で、誰の頭にも疑問の余地が残らないような解決策を真っ先に見つけなければならないのは、異なった経済社会システムを持つ国々が平和的に共存できるようにするということについてだ。これに関しては、今までも世界は大きな進歩を見せてきた。だが、帝国主義、特にアメリカの帝国主義は、その平和的共存の実現が地上の覇者にこそ許されている特権なのだと世界中の人々に信じ込ませようとしている。ここで、我々の大統領が第二回非同盟諸国首脳会議の行われたカイロで述べたこと、そしてその後に採択された宣言が何を訴えているのかということを申し上げておきたい。世界平和を確実なものにしたいと我々が望むなら、それを強国だけの意向に左右されないようにできる。国の大小を問わず、過去の歴史における互いの関係性にもよらず、その時その時にいくらかの国の間に揉め事があったとしてもそれは脇に置いて、平和的共存は全ての国々によって実現されなければならない。

 

 

今現在、我々が望みを抱くような形の平和的共存はしばしば踏みにじられている。カンボジア王国などは、ただ単に中立的態度を貫いてアメリカ帝国主義の謀略に屈しなかったために、南ベトナムにいる米兵によってありとあらゆるやり方で不実で残酷な攻撃に晒されることになった。

 

 

分断されたラオスなども、あらゆる種類の帝国主義による侵略の標的となっている。そこにいる人々が空爆で虐殺されているのだ。それはジュネーヴで結ばれた条約に違反する行為であり、その領域は帝国主義国の軍隊により絶えず繰り返される卑劣な襲撃の危険に晒されている。

 

 

ベトナム民主共和国は侵略の歴史の全てを知るこの地上で数少ない民族の一つである。そして彼らはまたしても目にすることになったのだ。国境線の侵犯、外敵による爆撃、戦闘機による軍事基地の襲撃、アメリカによる戦争、領海の侵犯、海軍拠点への襲撃といったことを。今回ベトナム民主共和国に襲いかかった脅威は、アメリカの戦争屋たちが南ベトナムの人々に対して仕掛けてきた長年の戦争を北ベトナムの領域内でも積極展開するかもしれないということだ。ソビエト連邦中華人民共和国はアメリカに対して真剣に警告を行っていた。我々が直面しているのは、世界平和が危機に瀕しているという事態である以上に、アジアの中に生きる数百万の人々の生命が絶えず脅かされ、アメリカの侵略者のほんの出来心に弄ばれているという事態なのだ。

 

 

平和的共存の理想はキプロスで容赦ない試練に晒されている。トルコ政府とNATOからの圧力により、キプロスの国民と政府は英雄的で断固たる姿勢によってその主権を死守することを迫られているのだ。

 

 

こういった世界のあらゆる場所において、帝国主義は自らの思い描く共存のあり方を押し付けようとしているのだ。社会主義陣営と同盟する抑圧された人々こそが、真の共存とは何かを示さなければならない。そして、それを支援することは国連に課せられた義務である。

 

 

平和的共存という概念は、主権国家間の関係性だけにおいて定義を確定させるべきものではない、ということも我々は申し上げておかなければならない。マルクス主義者として我々は国家間の平和的共存を維持してきたが、それは搾取する側と搾取される側の共存を許容するものではなかったし、抑圧する側と抑圧される側の共存を許容するものでもなかった。そして、あらゆる形態の植民地支配からの完全な独立という権利は、この連帯にとって基盤となる原則である。これこそが、我々がポルトガル領ギニアとか、アンゴラとか、モザンビークとか呼ばれている植民地の民族との団結の意を表明する理由なのだ。彼らは自らの自由を訴えるということを犯罪視され、そのことによって虐殺された民族である。そして我々には、カイロ宣言の協定に基づく自らの権能の限りにおいて、彼らを支援する用意がある。

 

 

プエルトリコの国民とその指導者ペドロ・アルビズ・カンポスに対しても、我々は団結の意を表明する。プエルトリコ政府の行なってきた偽善的行為の一つとしてアルビズ・カンポスは七十二歳で釈放されるに至ったのだが、長年に渡る監獄生活の末、ほとんど喋ることも出来ず、体は麻痺した状態だった。アルビズ・カンポスは、未だ自由ではないが不屈の精神を持つラテンアメリカの象徴である。何年も何年も監獄にいて、忍耐の限界に近いほどの圧力、精神的拷問、独房監禁、仲間や家族からの完全な孤立、生まれ故郷に巣食う支配者とその下僕の傲慢さなどにさらされたが、いかなる苦痛にも負けず、彼は己の意志を貫き通した。そういった人々の味方として、キューバの使節は我々のアメリカ大陸に名誉を授けてくれた愛国者に尊敬と感謝の言葉を贈るものである。

 

 

アメリカ合衆国は長年に渡りプエルトリコを交雑文化の模範へと変えようとしてきた。英語の抑揚のあるスペイン語、出自背景によって異なるスペイン語など、米兵の前に屈従するにはより適した言葉だ。プエルトリコ兵は、朝鮮でそうだったように帝国主義の戦争の中で捨て駒として扱われてきたし、米軍が数ヶ月前にパナマで丸腰の民間人に行った虐殺のように、自分の兄弟のような仲間たちを狙撃させられてきた。アメリカ帝国主義による犯罪行為で最も記憶に新しいものの一つだ。だがプエルトリコ国民は、民族の意志と歴史を左右する運命への侵害を受けながらも、自分たちの文化、ラテン人としての特質、国民意識など、ラテンアメリカの島々から集まった群衆の中にある独立への渇望を自らに証すものを維持してきたのだ。我々が警告しておかねばならないのは、平和的共存の原則が、イギリス領ガイアナと呼ばれる場所で起きたことのように、民族の意志を蔑ろにする権利など許容していないということだ。チェディ・ジャガン首相政権は、あらゆる種類の圧力や謀略の犠牲となってきた。民族の意志を蔑ろにするやり方を見つけ、権力者の裏工作によって据えられた新たな政府の御しやすさを確実にするための猶予があったために、チェディ政権は独立に遅れをとることになったのだ。こういったアメリカ大陸の諸国に、去勢された自由を与えるためのやり方である。ガイアナが独立獲得のためにどのような道を歩むことを強いられたとしても、キューバによる道徳的軍事的支援は彼らと共にある。

 

 

さらにもう一つ、我々が指摘しておかなければならないのは、グアドループとマルティニークが未だ勝ち得ない自分たちの政府を求めて長い間闘い続けてきたということだ。この紛争もうすぐ終わるはずだと私は確信している。もう一度言おう、南アフリカで起きたようなことからこの世界を守らなければならない。残酷なアパルトヘイト政策が行われるのを、世界中の人民が目の当たりにした。たった一つの人種の優越の下に置かれていることで政策は公的に維持され、人種的優越の名の下に殺人鬼が無罪のまま放置されている。アフリカの民族たちは、アフリカ大陸にのしかかるその事実を忍受することを強いられているのだ。このような事に対して、国連は何の手も打たないつもりなのか。

 

 

コンゴで起きた痛ましい出来事についても、とりわけ重要なこととして述べておきたい。それは現代の歴史の中では他にないような例で、全く罰せられることなく、最も非礼な冷笑主義により、どのようにして人民の権利が蔑ろにされてるのかを表している。そもそもの直接的理由になっているのはコンゴの持つ巨大な富としての資源であり、それは帝国主義諸国が支配下に置きたがっているものである。我々の同志フィデル・カストロが初めて国連に登場して演説を行った際、彼は平和的共存についての問題の全てが、外部の人間が富を不当に私物化している点にあると看破した。「同じ様に終わりを迎えるであろう略奪の哲学と戦争の哲学を今こそ終わらせるのだ」フィデルはそんなふうに言っていた。

 

 

しかし略奪の哲学は未だ終わりを迎えていないだけでなく、今までよりも力を増している。それこそが国連の名の下にコンゴ首相ルムンバを殺戮するなどということが今なお行われる理由であり、白人の保護の名の下に多くのコンゴ人を殺戮するなどということが行われる理由なのだ。パトリス・ルムンバが国連に託していた希望に対する裏切りを、何があっても忘れることはできないだろう。国連軍が占領に続いて、彼らの支援の下にアフリカの偉大な愛国者を暗殺させ、無罪のまま放置されているという、その陰謀と奸計を、何があっても忘れることができないだろう。特別使節の皆さん、コンゴにおいて国連の権威を蔑ろにした人物を、我々は何があっても忘れることができないだろう。それは正確には愛国的な理由からではなく、帝国主義者同士の争いの倫理によるものだった。そしてその人物とは、ベルギーの支援の下カタンガ州の分離を先導したモイーズ・チョンベである。そこで行われた国連の全活動の末に、結局はカタンガ州から追放されたチョンベが再び舞い戻ってコンゴの君主となるなどということを、いったいどうやって正当化し、説明をつけるというのか。誰か国連が帝国主義者から課せられている悲しい役割を果たすことを拒否できる者はいないのか。

 

 

さらにはまるでこれだけでは物足りないとでもいうように、我々の目の前に世界中が怒りに震えるような真新しい動きが飛び込んできた。その犯人が誰なのかご存知だろうか。それはベルギーの落下傘部隊であり、それを輸送したのはアメリカ合衆国の飛行機、そしてその飛行機が飛び立ったのはイギリスの基地だ。ヨーロッパの小国であり、文明化され工業化されたベルギー王国がヒトラーの大軍に侵略を受けたことが、まるで昨日のことのように思い出される。さらに苦々しいことに、この小国はドイツ帝国主義による虐殺を受けたことは周知の事実であり、犠牲になった人々は同情を誘う存在なのだ。しかし帝国主義者のコインのこの裏面は我々の多くには今まで見えていなかったものだ。おそらくは、祖国の自由を守るために死んでいった愛国者の子供たちが、今は白人という名の下に冷血な殺人鬼として数多くのコンゴ人を殺している。アーリア人の血を充分に受け継いでいないという理由によって、自らもドイツ人の踵に踏みつけられて苦しんだのと全く同じだというのにだ。今こそ我々の自由な目を新たな地平へ向けて見開いて、植民地支配の奴隷だったその過去において、我々がいったい何を見落としていたのかをしかと見届けよう。「西欧化」というものは、その華々しい外観の後ろに、ハイエナとジャッカルの姿を隠しているのだ。コンゴにおける「人間的」作業を完遂するために赴いた連中に相応しい名前はこれくらいだ。この肉食獣は非武装の人民を餌にしている。これが帝国主義の人間への仕打ちだ。これが帝国主義「白人」の、目に余る姿なのだ。

 

 

全ての自由な人間はコンゴでの犯罪に報いるよう態勢を整えなければならない。おそらくその兵士たちの多くは、帝国主義的組織によって人間性を失わせられ、優越人種の権利を守ることが善い行いなのだと信じこまされている。しかしこの総会において、それぞれの太陽と色素によって肌を黒く染められた民族たちは依然として多数派なのだ。そして完全に、はっきりと、人間の格差は自らの肌の色によるものではなく、生産手段の所有形態と生産関係によるのだと理解しているはずだ。キューバの使節はさらに、少数派の白人植民地支配者に抑圧された皆さんにもご挨拶を申し上げる。南ローデシア、南西アフリカ、バストランド、ベチュアナランド、スワジランド、フランス領ソマリランド、アデン、保護国、オマーン、そういう国民の皆さんにだ。そして帝国主義と植民地主義と戦う全ての人民の皆さんにもだ。我々はそういう人々を支援するということを、改めて述べておく。

 

 

インドネシア共和国がマレーシアとの関係において抱えている紛争にも解決の手段があるよう私は望んでいる。議長殿、この会議の最も根本的な議題とは、全般的で完全な武装解除ではないだろうか。我々はその全般的で完全な武装解除への支援を表明するものである。さらに、我々は全ての核融合設備の解体を支持し、世界中の全ての国々による会議を開き、この全人類の理想に現実感を与える試みを支援する。この総会において我々の首相が以前に警告したのは、武装した種族は必ず戦争を巻き起こしてきたということだ。世界には新たな核兵器の力が存在し、対立の可能性は高まっている。このような会議によって核融合兵器の全般的な解体を成す必要があり、まずその第一歩として、核実験の全般的な禁止を行うべきだろう。そして同時に、全ての国々が今現在においての互いの国境線を尊重し、侵略と核兵器以外の武器についての使用を控えるという義務をはっきりとした形で定める必要がある。

 

 

世界の全人類が求める全般的で完全な武装解除と核保有の解体、新たな核施設建設とあらゆる種類の核実験の完全な停止を、我々もまた声高く求めるものである。そして、国の領域不可侵性は尊重されなければならず、帝国主義は武器を握りしめた手を引っ込めなければならない。そのために、強制力を働かせることが必要だと我々は考えている。

核兵器以外の武器も非常に危険な存在なのだ。コンゴでたくさんの無防備な市民を虐殺した連中は、原子爆弾を使わなかった。連中が使ったのはそれ以外の兵器だ。そのような兵器は今までから帝国主義者によって使用され、多くの死者を出すことになった。

 

 

チェ・ゲバラ国連演説全訳 その2へ――